COLUMN
ひとのこころを動かすインテリア(第1話)
Panasonic Beauty SALON 銀座
株式会社丹青社で
クリエイティブディレクターとして、
Panasonic Beauty SALON 銀座、
渋谷ヒカリエ ShinQsのスイッチルームなど、
さまざまな空間づくりを手がける
町田怜子さん。
商業施設における豊かな空間の
つくり方についてお話をうかがいました。
INTERVIEW
聞き手:牧尾さん(以下:牧尾)
まずは2017年に銀座にオープンした、Panasonic Beauty SALON 銀座(パナソニックビューティー サロン)についてお聞かせください。パナソニックの美容家電の体験型サロンですが、季節ごとの最新アイテムを紹介する1階から、実際にじっくりと体験できる2階、さらにはより深くオーダーメイドのサービスや専門的なセミナーが展開される3階・4階と、要求される雰囲気はフロアごとにかなり違いますね。
町田さん(以下:町田)
全体としては、忙しい女性たちに美容家電を使ってもらうため、まずは気軽に体験してもらうことを目的としています。1階と2階は立ったまま気軽に試していただけるようなサービス、そして3階・4階へと上がるにしたがって、予約制の内容もふくめ、より深く充実した体験をしていただけるようになっています。各フロアの内容にあわせてデザインやマテリアルも異なります。
具体的には、1階と2階はサロンのイメージカラーの白とゴールドをメインにしています。商品の魅力を引き立てる背景でありつつも、サロンのカラーやイメージを街にしっかりと発信しています。特に仕事帰りの方々が行き交う夜には、明るく煌めく空間としています。
明るく開放的なエントランスに比べると、3階は半個室でリラックスしていただけるように、ダークで落ち着いた雰囲気に、トーンも控えめにしました。素材として木を使ったり、カーテンで空間を仕切ったりしていますね。
牧尾
布って柔らかくて扱いが難しい部分もあると思いますが、いかがですか?
町田
そうですね、たしかに布で形をつくるのは難しいけれど、好きな素材です。境界に使うときにも、壁よりもやわらかい手ざわりで、見通しも感じられます。
この建物の1階でも、奥はすべてカーテンにしてあります。たとえ触れていなくても、そこにあるだけで、目で柔らかさを感じられるんです。私はこういう女性向けの空間を担当することも多いのですが、雰囲気がやわらぐので、ファブリックをよく使います。
牧尾
女性向けの空間を担当することが多いというのは、物件との相性なんかも考慮しながら、ご担当物件が決まっていくからでしょうか?
町田
そうですね、当社の営業担当とも「これは町田が得意とするような物件では?お客さまのご要望と合うのでは?」といった話もしながら進めていきます。
「女性デザイナーでお願いします」というご依頼もよくあります。性別という点からもダイバーシティの重要性が叫ばれている時代ですが、インテリアデザインは女性が働き、活躍しやすい業界だと思います。女性であるということが、気づかい、やわらかい表現やしなやかさなど、デザインにおいて有利になることもあると思いますので、そういった部分はどんどん出していきたいです。ファミリーやカップル向けの物販施設でも、いろいろな場面で、実は女性が意思決定しているケースもありますし(笑)。デザインの現場で女性の感覚を取り入れていくことはこれからも大切でしょうね。
PROFILE
空間デザイナー(株式会社丹青社)町田怜子さん
東京都出身。明治大学大学院理工学研究科建築学専攻修了の後、株式会社丹青社入社。同社デザインセンター コミュニケーションデザイン局にてクリエイティブディレクターとして活躍中。
にぎわう商業空間づくり、心地よいオフィス空間づくりなど、多岐にわたる分野での経験を積む。
女性ならではの感性と持ち前のコミュニケーション力を活かし、異分野のクリエイターとのコラボレーションに積極的に参画するほか、デザイナー同士の交流の場づくりにも取り組んでいる。本コラムで紹介している以外にも、「銀座文明堂東銀座店」、「日本赤十字有楽町献血ルーム」、「コニカミノルタ浜松町ショールーム」など、多くのプロジェクトを手がけている。「JCD design award 2010銀賞」、「ディスプレイ産業賞2012特別賞」をはじめ、受賞多数。
(プロフィールは記事掲載時(2018年4月)のものです)
聞き手
牧尾晴喜
株式会社フレーズクレーズ 代表
一級建築士、博士(工学)
メルボルン工科大学大学院修了、メルボルン大学にて客員研究員
大阪市立大学非常勤講師、摂南大学非常勤講師
公益社団法人 日本インテリアデザイナー協会理事